SONY、サムスンそしてFacebookが、各々自社でVRヘッドセットを保有していて、VRの世界観を広めようとしています。
2年程前から、「次はVRの時代だ」と言われていましたが、なかなか普及しないのが現状です。Facebookも、VRの普及はまだまだ先の話と認めています。
一方で、アーリーアダプターは存在していて、ゲームからヘルスケアまでの広い分野でVRを利用しています。アメリカのある調査によれば、66%の人が「VRは今後人々の生活の一部になる」と信じていることが分かりました。
今回、Facebook IQは自社製品Oculus Riftを利用して、人々のコミュニケーションにおけるVRの影響力を調査しました。具体的には、VR越しで初めて出会う人とコミュニケーションを行う際の、感情や会話内容を調べたものです。この調査で、将来的なVRを通じたエンゲージメントの潜在性などが見えてきました。
この調査では、互いにまだ知らない60人の人達が集められ、半分はVRを通じて、半分は対面で初めて会話してもらうというものです。
調査はFacebookとNeuronsという会社が行い、EEGヘッドセットを使って、2つの違う環境下での人々の脳の反応を見ました。実際の調査の様子が下の動画です。
参加者の多くは、自分をVRのレイトアダプターと認識していて、一度も体験したことがなかった人達でした。それにも関わらず、EEGから見た脳シグナルはポジティブなもので、VR下でコミュニケーションを取ることですぐに安心感を感じるレベルに達したようです。
過去を遡ると、電話やメールも新しいコミュニケーション手法として人々の生活に浸透してきました。普及した要因には、「簡単」、そして「楽しい」と人々に感じてもらったことにあると考えられています。
EEGではVR下でコミュニケーションしている人々の「Cognitive effort」のレベルを測ることができます。「Cognitive effort」とは、人間が情報を覚えたり、処理したりする際の理想的な精神状態をみる指標で、高過ぎても低過ぎても良くないとされています。
例えば、瞑想している人の脳の「Cognitive effort」レベルは低く、人間の脳内には「退屈感」が表れるとされています。一方で、大渋滞にぶつかっている人は、脳への刺激が非常に強く、「Cognitive effort」が高くなり、冷静な判断や情報処理が出来なくなるとされています。
VR下でコミュニケーションしている人々の「Cognitive effort」は程よく、高くもなく低くもない結果となりました。これはストレスもなく、「楽しい」と感じている証拠で、人々が電話やメールをしている時と同じ反応だそうです。
つまり、人々の脳シグナルから考えると、VRも電話やメールと同様に普及する要因を満たしているということになるのです。
VR下で行われる会話は、個人的なトピックでした。普通なら初対面の人に個人的なことを話すことはないと思うのですが、ほとんどの人がスムーズに会話をすることが出来たようです。参加者も、初対面の人に対して、こんなにも安心感を持って自分のことを話せたことに驚いたと、調査後述べていました。
また、内向的な人、外向的な人といると思いますが、普段人と話しをすることを得意としない内向的な人は、VR下では人々の自意識が下がる一方、自信を持ってコミュニケーションできるようで、リアルの世界よりもVRの世界での方が他人と進んで会話することが出来ることが分かりました。
このように、VR下でコミュニケーションを取ることに対し、人々は非常にポジティブな感情で会話を進めることが出来ることが分かります。
アメリカの調査によれば、一般の人々の多くがVRを旅行、ショッピング、エンターテイメント、そして仕事で利用出来るのではと答えています。
今回の調査で、VR環境では、人々は高いコミュニケーション力で会話をすることが分かり、仮に企業がVR下で消費者と話すとしたら、高いエンゲージメントを獲得できるのではないかと考えられます。
Facebookは、今後10年でVRは人々のコミュニケーションや体験を変えていくと信じています。まだ先の話ではありますが、電話やメール、ソーシャルメディアが出現したときのように、新たなコミュニケーションはマーケティングを変えていきます。
「自分の会社だったらVRを使ってどのように消費者にアプローチできるか?」といったことは、今から考えておくといいかもしれませんね。
参照:Facebook IQ, How Virtual Reality Facilitates Social Connection