これまでの2回で、消費者の心を掴むマーケティングということで、コピーライティング、動画を利用した事例をご紹介してきました。
今回は、お試し商品をうまく活用して顧客の心を掴んでいる事例をご紹介いたします。
目次
ECサイトの弱みは、商品が届くまでユーザーが現物が見られない点にあります。商品やECサイト事業者に不安を抱いた消費者は、購入に二の足を踏んでしまいがちです。
そのような場合に、少ないリスクで利用を開始できる「お試し商品」の提供は有効な手段と言えます。特に、食品や化粧品といった分野では高い効果が期待できます。
そして、お試し商品のユーザーを、いかに本商品のユーザーへと転換できるかがECサイトとしての “腕の見せ所” と言えるでしょう。
独自の地ビール「よなよなエール」を製造するヤッホーブルーイングは、他とは異なる味わいを届けるため、お試しセットの展開を始めました。楽天市場では2缶で500円(送料無料)と赤字覚悟で展開したキャンペーンは、広告費をかけずとも話題を呼んだため、結果的には黒字へとつながりました。
現在は、楽天市場だけではなく、自社のECサイトも構築し、4種類のビールを詰め合わせた“お試しセット”を導入しています。1日先着300名限定といった条件をつけるなど、お試しセットにも工夫を凝らしてきました。
Birchboxは2010年にニューヨークで創業されたECサイトで、スキンケア・香水・オーガニック製品などを取り扱っています。月額サービスに登録したユーザーには、毎月5種類程度のメーク用品や化粧品が届きます。サンプルを試したユーザーは、アンケートに回答してポイントを貯められ、また、回答に応じて好みが登録されるため、自分の好みに合ったサンプルが届くようになる仕組みです。
また、BirchboxのECサイトやニューヨークの店舗で、サンプルだけではなく本製品も購入が可能です。様々なサンプルが試せる仕組みが評価され、100万人以上の登録ユーザーと800もの化粧品ブランドがBirchboxを利用しています。
Finch Goods Coは男性向けファッション小物のオンライン・セレクトショップを運営していました。創業者によって立ち上げられたばかりの同社は洗練された商品の選定に注力するため、ECサイトを訪問したユーザーは確実にコンバージョンへつなげる方針を立てています。
同サイトの特徴は個性的なポイント制度です。購入時はもちろん、アカウント作成や友人の紹介といったイベントでもポイントが蓄積されるため、ユーザーとの関係深化に役立ちます。
また、何かしてもらった人には恩返ししたくなる心理を利用し、無料特典の進呈にも積極的です。配送時に手書きの手紙を添付したり、無作為にプレゼントを送付したりして、顧客の心をつかんでいます。
今回は、試供品をうまく活用したEC事例をご紹介しました。商品が手に届くまで見れない不安をいかに解消するかは成功のポイントとなるようです。
難しいところは、24時間いつでも購入できるというECの強みを活かしきるためには、疑問を持った時にすぐ解消できなければ購入には結びつかないということです。
近年、この課題を解決できるチャットボットが登場しました。次回は、チャットボットとは何か、そしてどのような活用のされ方をしているのかを事例を通して見ていきます。