Webサイトを運営する上でファネル分析をすることは、サイトの短所また長所を理解することに繋がるため、とても重要です。
本コンテンツでは、ファネル分析をすることの重要性やそこからどの部分を改善するべきかを、ちょっとした数学を交えながら解説していきます。
目次
ファネル分析という言葉は知っていても、「あまりよく分かっていない」・「知っているけど使ったことがない」という方は案外多いかもしれません。
ファネル分析とは、Webサイトへ流入したユーザーがコンバージョン(商品購入・お問い合わせ完了・資料ダウンロードなど)に至るまでに、どの段階でどの程度離脱しているかを調べて改善に活かす手法です。
例えば以下のようなグラフを見ると分かりやすいかもしれません。
これは、とあるECサイトのユーザーの動きをファネル分析にかけてみた結果として考えてみましょう(値はかなり適当です……)。
このグラフでは、
ということが分かります。
これがもし流入数(8202回)とコンバージョン数(40回)だけしか分からなかったら、 「あぁ……うちのサイトはコンバージョン率0.5%か……」ということしか分からず、これからどのように改善すればよいか分析できずに途方に暮れてしまいますね。
しかし、このように各経路での訪問数が分かっていれば、「あの部分を改善すればいいんじゃないか!?」と改善案が浮かびそうです。
ECサイト運営担当者のFさんは、ファネル分析を使ってコンバージョンに至る経路に関する分析することにしました。彼は改善案として「ステップ間の離脱率改善」を思いつき、そのための予算獲得を上長に提案することにしたのです。
彼はサイトのデザインを改善することで、全ステップの離脱率を下げる効果を見込めると考えました。以下はFさんが作った資料の抜粋です。
ここで登場してきたのが、同じWebサイトの管理を担当するFさんの同僚、Iさんです。その結果、彼は「たかが離脱率1%や2%のためにサイト改修するより、SEOをかけたり広告をバンバン打って流入数改善をすべきだ」と主張しました。
「離脱率が下がらなくても、サイト全体の流入数を増やしてあげれば、同じコンバージョン数が獲得出来る」というのが彼の主張です。
数字に落とし込むのが正義と考える上長は、Fさん案における「1%改善」と「2%改善」と同等の効果を得られるのは、流入がどれぐらい増えた時かを調べるよう命じました。
Iさんは電卓を用いて計算を行いました。すると、思いがけない数字が現れたのです。
各ステップの離脱率を1%改善して得られるコンバージョン数は47件。これと同等のコンバージョンを得るには「8,200→9,400」という流入数の成長が必要と分かりました。
さらに、各ステップの離脱率を2%改善して得られるコンバージョン数55件を達成するには、「8,200→11,000」という流入数の成長が必要だったのです。これは34%の流入増にあたる成長です。
Iさんは自分の改善案を取り下げることにしました。彼は離脱率2%程度の改善であれば、流入数もちょっぴり増やすだけで同等の効果が得られると勘違いしていたのです。
ここでクイズです。
働き者の貴方の枕元に小人が現れて、こんなことを言いました。
「一つだけ、好きなステップを選んでください。そのステップの離脱率を5%改善してみせましょう」
コンバージョンを増やすことを目的とする場合、どのステップの離脱率を下げるべきでしょうか?
下の4つの選択肢から選んでみてください。
正解は……2の「最も離脱している経路」です!
実は、この正解は一般的な事実であり、ファネルによりません。
いつでも、「最も離脱率の高いステップ」を改善することがコンバージョン数を最大化します。
多くの方が1の「全体から最初の経路までの離脱率」を選んでしまったのではないでしょうか?
最も母数が大きいところを改善すれば最大の効果が得られるというのも説得力のある説明ですが、実は間違っています。
なぜこのようなことが言えるかについて、次節でちょっとした数学を用いて証明していきます。
まずは、通常の解析に使う「離脱率」ではなく、「残存率」という言葉を定義してみましょう。
残存率とは、コンバージョン経路のあるステップから、その次のステップに進んでくれたユーザーの割合のことです。
言い換えると、残存率 = 100% – 離脱率 によって計算出来る値のことですね。
上図において、「全体」から「1.商品一覧」の残存率は55.0%、「1.商品一覧」から「2.商品詳細」の残存率は71.1%、という風に使うわけですね。
ここからは、全ての数字を記号に置き換えて考えていきます。
とします。
これらの記号を使って、上図のコンバージョン数C をどうやって計算することが出来るか、お分かりでしょうか?
まず、「1.商品一覧」への流入数はS * P1 で計算ができます。
続いて、「2.商品詳細」への流入数はS * P1 * P2 で計算ができます。
この要領で計算していくと、最終的なコンバージョン数は
C = S * P1 * P2 * P3 * P4 * P5 と表すことができるでしょう。
いよいよ、特定ステップの離脱率を5%改善した時の効果を測ってみましょう。
ここでは、ある「1.商品一覧」から「2.商品詳細」までの離脱率を5%改善できたとします。
離脱率が改善したわけですから、残存率P2が5%大きくなることになりますね。
そうすれば、計算結果のコンバージョン数におけるP2に対応するところが、P2+0.05に置き換わることになります。
こうして得られた改善後のコンバージョン数を、C’と呼ぶことにしましょう。
さて、C’の値をもう少し見やすく変形してみます。
C’ = S * P1 * (P2 + 0.05) * P3 * P4 * P5
= S * P1 * P2 * P3 * P4 * P5 + S * P1 * 0.05 * P3 * P4 * P5
ここでは中学校で習う「分配法則」を使って、カッコを展開してみました。
改善後のコンバージョン数C’は、S * P1 * P2 * P3 * P4 * P5 と S * P1 * 0.05 * P3 * P4 * P5という二つの要素の足し算で構成されることがわかりました。
実は、前者のS * P1 * P2 * P3 * P4 * P5 という値は改善前のコンバージョン数Cと同じです。
ゆえに、後者のS * P1 * 0.05 * P3 * P4 * P5が、離脱率の改善によって得られる、コンバージョン数の増分にあたるというわけなのです。
以上の議論から、各ステップの離脱率を5%改善したときの、コンバージョン数の増加分について知ることができました。
改善内容 | コンバージョン数の増加分 |
---|---|
全体からステップ1の離脱率を5%改善 | S * 0.05 * P2 * P3 * P4 * P5 |
ステップ1からステップ2の離脱率を5%改善 | S * P1 * 0.05 * P3 * P4 * P5 |
ステップ2からステップ3の離脱率を5%改善 | S * P1 * P2 * 0.05 * P4 * P5 |
ステップ3からステップ4の離脱率を5%改善 | S * P1 * P2 * P3 * 0.05 * P5 |
ステップ4からコンバージョンへの離脱率を5%改善 | S * P1 * P2 * P3 * P4 * 0.05 |
ここまで計算をすることで、上表の「コンバージョン数の増加分」カラムの5つの数字のうち、一番大きな数字はどれか?という問題まで落とし込むことができました。
5つの値を見比べてみましょう。
どれも、S * P1 * P2 * P3 * P4 * P5のうち、P1, P2, P3, P4, P5のいずれかが0.05に置き換わった値になっていますね。
この値が最大になるのは、最も小さな残存率Piの値を持つステップを選んだ時です。
最も小さな残存率を持つステップとは、最も大きな離脱率を持つステップのことです。ですから言い換えると、一番離脱率の高いステップiを改善対象に選ぶことで、コンバージョン数の増加分をもっとも大きく出来ることのですね。
このことから、特定のステップについて、決められた割合だけ経路を改善するとしたとき、最も離脱の多いステップについて改善する事が最も効率的な施策である、ということが示せました。
このようにファネル分析を行うと、様々なことが見えてきます。是非クライアントのアクセス解析にも生かしていきたいですね。
しかし仕組みは分かったけど、こんな風に見やすいレポートを作るのが大変だったり、上記のような計算をすることが大変だったりします。
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