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「バドワイザー」の改名から学ぶ 「リブランディング」を行う背景と狙い

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リブランディングについて講義をする男性

商品名によって売れ筋は大きく変わります。日本でも、商品名を変えたことで劇的なヒット商品になった事例はよくあります。例えば、皆さんも大好きな「お〜いお茶」は当初は「缶煎茶」という商品名で全く売上は伸びませんでした。しかし、今の名前になって急激に売上が伸び20年間緑茶飲料シェア1位の定番商品となりました。

他にも、抗菌防臭加工の靴下「通勤快足」という商品も「フレッシュライフ」という名前から変更した結果、売上は10倍となりました。これらは、「親しみが持てる」や「分かり易い」を理由に成功したと言われています。

そして先週、あの有名ビールブランド「Budweiser(バドワイザー)」が期間限定で名前を「America」に変えることを発表しました。

変更の概要

今回の変更は5月23日から大統領選投票当日の11月8日までの期間限定となっています。「Budweiser」から「America」への変更は、まさに愛国心を唱ったものとなっています。現に商品名の下に書かれていた「KING OF BERRS」というキャッチフレーズも「E PLURIBUS UNUM(多数でできた一つ)」というアメリカを象徴する公的印章に刻まれている標語へと変更されました。

また、ラベルの一番下部に書かれている社名「ANHEUSER-BUSCH, INC.」も「LIBERTY& JUSTICE FOR ALL(万民のための自由と正義)」といった国家への忠誠を宣誓するアメリカで非常に有名な一節が利用されています。

Before
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after
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商品名変更の狙い

「Budweiser」は120年前に誕生して、一時は世界で最も売れたビールとなっています。1989年以降シェアは落ち続け、2008年には製造会社アンハイザー・ブッシュがベルギー会社インヘブに買収されました。

さらに、より健康的なライトビールやクラフトビールの人気上昇により、「Budweiser」の売上はどんどん下落していき、今となっては「Budweiser」を飲んだ事がないという人も多いようです。

恐らく、今回の狙いはブランドイメージを一新して売上回復を目指すものだと考えられます。しかし、既に認知度が高い商品名を変更するのは非常にリスクが高いです。「お〜いお茶」などの例は元々は認知が低い商品だからこそ成功しました。一方、「Budweiser」は一応世界中で知られているビールです。それをいきなり変更するのは、一般的には消費者のブランド純粋想起率が下がると考えられます。

今回の商品名変更は成功するか?

実は、今回のような期間限定での変更事例はあります。例えば、アイスクリームブランド「Ben & Jerry’s」も同性愛結婚を肯定するべく「Chocolate Chip Cookie Dough」という商品名を「I dough I dough」に期間限定で変更しています。(*I doughとは結婚式でカップルがお互いに言うI doと掛けている)

この売上の一部は同性愛者を支援するNPO団体に寄付される仕組みになっていて、多くの当事者と共感者に感銘を与えました。結果としては、Ben & Jerry’sに対する消費者のロイヤリティを約2.5倍深めたと言われていて、この取り組みは成功事例として考えられています。

この事例から、「Budweiser」も復活の兆しを得る可能性は十分あり得ます。特に皆さんもご存知のように、今回のアメリカ大統領選はこれまでと違った流れや価値観に国民は動いています。ここ数年間政治的にも経済的にも不安を拭い取れない状況に、「何としてもアメリカを復活させよう。良くしよう。守ろう。」という強い愛国心精神が盛り上がっているようにも映っています。これこそ、現在多くのメディアが表現している「波乱続き」という原因の一つだと考えられます。

これを背景に、「Budweiser」の商品名変更はさらなるアメリカ国民の愛国心精神を刺激するものかもしれません。これまで一度も「Budweiser」のビールを飲んだことない人に手を伸ばさせ、味を覚えてもらえるチャンスと言って良いでしょう。この戦術が成功すれば、「Budweiser」は復活の門へと一歩踏み出す契機を掴めるでしょう。

まとめ

愛国心を象徴した商品名に変更したということから、今回の取り組みを政治的流れの観点から考察してみました。「Ben & Jerry’s」の過去事例も同性愛者に対する酷い差別を背景に行われました。多くの消費者が抱える不安や悩み等の社会問題に向けたブランディングも企業戦略の一つです。

今回の「Budweiser」の取り組みを戦略と言ってしまったら聞こえは悪いですが、これをきっかけに改めてアメリカ国民が愛国心を持って「国としてあるべき姿」を考えるようになったら、大きな社会貢献へと繋がるのではないでしょうか?

参照:
Forbes, Maiking Budweiser Great Again.
Sustainable Brand, Letting Your Mission Drive Success: Lessons from Ben & Jerry’s and Seventh Generation


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