前回のコラムYouTubeの中の人が見つけたバズる動画の3つの法則!に続き、バズる動画の条件について検討していきます。
また、後半ではバズる動画の条件のまとめと、興味深い点について触れていきます。
バズる条件の二つ目の切り口として、2013年のベストセラー書籍「Contagious: Why Things Catch On」を紹介します。この本は動画に限らず、あらゆる商品に関して、口コミを巻き起こす方法を研究しています。
本コラムでは「Contagious」で指摘された6つのポイントを紹介します。
人は皆、他人からよく思われたいものです。高価な洋服や腕時計を身に付けるのも、見栄を張っている部分があるでしょう。
ソーシャルメディアにおいても、他人からの評判は気になります。くだらない動画を見ている人と思われるよりも、面白い、役立つ、意義深い動画を見つけることができる人と思われる方が良いものです。自分の評判を高めてくれる動画は、シェアされる可能性が高まります。
2014年夏、アイス・バケツ・チャレンジが世界中を席巻しました。筋萎縮性側索硬化症 (ALS)研究への募金を集めるためのキャンペーンであり、参加者は寄付をするか、氷水をかぶる様子を撮影した動画を公開することで、情報の共有・拡散が促進されていきました。
ビル・ゲイツ氏らの著名人が参加したことで、動画がバズる要因になりました。ALSという難病を支援するという名目があるため、参加者の社会的な評判を高める効果があります。そのため、一般大衆が参加への意欲を掻き立てられたと考えることができます。
ある製品やアイデアを思い出すトリガーが多いものほど、話題に上りやすいと言われます。日常生活と上手く結びつけることで、動画の認知度を高めることができるのです。
2011年に公開されたレベッカ・ブラックの曲「フライデー」は歌詞・歌唱力・映像の完成度の低さから「史上最悪の曲」と評されていましたが、その話題性の高さからYouTubeでの再生回数は8000万回を超えました。
そして、再生回数が特に伸びるのは、もちろん金曜日(フライデー)です。
参考資料
人は感情を動かされたときに強い印象を覚え、他人にも知らせたくなります。特に「鉄板」と言われるコンテンツは感情をうまく刺激する効果があるのです。
感情には正と負の二種類があります。正の感情は興奮、ユーモア、尊敬といった要素があり、負の感情には不安や怒りが含まれるでしょう。動物や子供は正の感情を抱かせますが、物議を醸す発言により注目を集める「炎上マーケティング」は負の感情を利用しています。
また、感情は複雑に入り混じったものでもあるので、正負両方の感情を同時に抱くこともあります。政治家の釈明会見は面白がって見られることもあれば、怒りをもって受け取られることもあるでしょう。
人は本能的に他人をマネします。そして、人目に触れやすいものほど、人は無意識のうちにマネしたくなります。さらに、公の場で見えやすいものほど、マネが促進されると言われます。
いわゆる流行語は人目に触れることで“伝染”が進みます。メディアに大量に露出したり、日常生活でも話題にしたりすることで、より人目に触れ、よりマネされるトレンドへと変化していきます。
東進ハイスクール講師の林修先生が使った「いつやるの?今でしょ!」は、テレビコマーシャルとして大量に放送されましたが、日常生活でも使いやすいフレーズであるため、多くの人にマネされました。
結果として、2013年度新語・流行語大賞年間大賞を受賞するまでに至りました。
お買い得情報や、誰でも実践できるノウハウは好まれます。興味を喚起しやすいだけでなく、役立つ情報を他人にシェアすることで、人の役に立ちたいという人々の心理を利用できる点もメリットとして上げられます。
生活の知恵があつまる情報サイトnanapi 「ナナピ」はYouTube公式チャンネルを開設し、実践的な生活情報を公開し、多くの再生回数を得ています。
参考資料
人間は事物の羅列よりも、ストーリー性を持った一連の出来事の方が、より強く記憶に残り、好意的に認識すると言われています。商品情報の押しつけではなく、商品の背後にあるストーリーと視聴者を上手く関連付けることで、バズる動画を生み出すことができます。
プライベートジムを運営するライザップのコマーシャルは大きな話題を呼びました。太ってしまって自信も失った著名人や一般人が短期間で筋骨隆々のスタイルに変身するという、明快なストーリーが強い印象を与えています。
YouTubeに公開された動画も10万回以上再生され、高い広告効果を生みました。
前回のコラムと合わせて、二つの切り口からバズる動画の条件について検討しました。
子供や動物を登場させれば人気になるというような単純なものではなく、共感、参加、拡散を促すようなコンテンツや仕掛けによって、バズる動画が生み出されてきていることが分かります。
興味深い点として、ポジティブな評価だけが口コミにつながるわけではないということを指摘したいと思います。先に挙げたレベッカ・ブラックの曲「フライデー」はYouTubeにおいて「高評価」を付けた人数が13万人程度であるのに対し、「低評価」を付けた人数は113万人を超えました。
賛否が分かれるからこそ、話題になった側面があります。誰もが肯定してしまう内容は悪い意味で“普通”になってしまうことがあり、話題に上ることがありません。反対意見が出ることで議論が活性化され、人々の正負の感情を巻き起こし、世間が「ざわつく」、つまり「バズる」現象を発生させることができるのです。
動画広告においてはB2B、B2Cを問わず、多くのバズる動画が生まれています。次回からのコラムでは、これまで紹介したSIPSモデルやバズる動画の条件を念頭に、これらの成功事例を分析します。
参考資料: