マーケティングの世界では消費者の行動を説明するための理論がいくつも提案されてきました。1920年代にはマス広告による注意喚起から商品理解、購買への流れを説明する「AIDMA」というモデルが提案されており、AIDMAは「Attention(注意)」、「Interest(興味)」、「Desire(欲求)」、「Memory(記憶連想)」、「Action(行動)」という5段階で構成されています。
また、インターネット時代の消費者行動プロセスとして電通が定義した「AISAS」はネット検索を重視しており「Attention(注意)」、「Interest(興味)」、「Search(検索)」、「Action(行動)」、「Share(共有)」という5段階があります。
本コラムでは、その次のステップ、ソーシャルメディア時代における消費行動プロセス「SIPS」について解説します。
ソーシャルメディアが中心となった現代では「SIPS」というモデルが提案されています。SIPSの要素は「Sympathize(共感)」、「Identify(確認)」、「Participate(参加)」、「Share&Spread(共有・拡散)」の4段階です。
商品を押し付けるような広告からは共感が生まれません。共感を生むためには、視聴者の心に訴えかけるようなストーリーや、信頼のおける企業イメージなどを作り出す必要があります。
また、誰が共感を伝えるかも重要になります。同じ商品の情報でも、知らない人から伝えられるよりも、ソーシャルメディアでつながった友人から伝えられるほうが信頼がおけるでしょう。
同様に有名人や専門家をうまく活用することで共感を生み出す手法もあります。
広告で新しい家電製品を見つけたら、どうしますか?価格比較サイトで最安値を探したり、レビューを調べたりするのではないでしょうか。膨大な情報にさらされている消費者は慎重です。買ってから後悔しないよう、評判を確認せずにはいられないのです。
前のステップである「共感」で抱いた思いが、「確認」作業によって明らかになった実態と合致していれば、消費者は次のステップに進む可能性が高くなります。逆に、不正やウソが発覚してしまえば、一度「共感」で高まった気持ちが裏切られるため、より深い不信感を覚えることになるでしょう。
SIPSモデルにおいては商品を購入するだけがゴールではありません。ソーシャルメディアで「いいね!」する等、ブランドを応援する行為についても、他の見込み顧客へ訴求する効果があるため、広い意味でブランドへの貢献をしてくれたことになります。
SIPSモデルは以下にある4段階の参加形態を提唱しました。
サイトを訪問する、動画を見る等、受動的な関係を持つ
商品を購入する。ソーシャルメディアやコミュニティに書き込みを行う
商品をリピート購入する。企業を擁護するコメントを書き込む
個人的に応援サイト、ファンページを応援し、商品の訴求を主体的に助ける
SIPSモデルの最後のステップは共有と拡散です。ソーシャルメディア上では一人の「参加」行動は周囲の人々に伝播されます。
例えば、あなたがライブに行ったことがSNSでシェアされれば、あなたに興味を持っている友人たちは、これまでライブに行ったことがなくても、そのライブに興味を持つかもしれません。ソーシャルメディアではこのような友人関係の広がりが、複雑に絡み合っています。
音楽関係の友人もいれば、スポーツ関係の友人もいるでしょう。あらゆる関係性を持った友人が「あなた」の参加行動によって注意が喚起されるのです。そして、SIPSモデルでは「共有・拡散」された情報は、さらなる「共感」を生み、人々の「確認」「参加」を増幅していくのです。
良質なコンテンツはSIPSモデルが上手に作用し、共感から共有・拡散に至るサイクルが増幅していくと考えられています。つまり、SIPSモデルの成功が「バズる」動画なのです。
次回以降のコラムでは、バズる動画を作り出すための条件について考察します。
参考資料: