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なぜ使われないシステムが生まれるのか?エンプティステートを極めよう

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Posters on brick wall

「データがありません」「検索結果は0件です」「エラーが発生しました」無味乾燥なメッセージに絶望した経験はありませんか?このような状況は頻繁に発生するにも関わらず、システム設計者は十分に検討していない場合が多々見受けられます。次に何をすれば状況を打開できるのかを説明しなければ、ユーザーは離れていくだけです。UX(ユーザー体験)を向上させる鍵は「エンプティステート」、つまり、”空っぽの状態“にあります。

UXで最も重要になるのは“空っぽの状態”

ユーザーがシステムを使い始める際には空っぽの状態から始まります。例えば、Facebookに新規登録したら、始めは誰も“友達”がいないでしょう。ユーザーがシステムの使い方を熟知し、価値を理解するには、最初の状態で正しくガイドする必要があります。

この初期状態を「エンプティステート」と呼び、UX(ユーザー体験)を考える上では最も重要な要素の一つとして理解されるようになってきました。エンプティは「空の」、ステートは「状態」を意味し、システムが空の状態で、どのようなUXを提供するかで、システムがユーザーに受け入れられるかが決まります。

例えば、Gmailでは新規にユーザー登録すると、自動的にGoogleからメールが届き、Gmailの使い方がガイドされます。さらに、より深く理解して使いこなしたいユーザーのために提供されるのは、チュートリアルや詳細設定へのリンクです。もし、最初に画面を開いた際に、受信箱が空っぽだったら、何から始めれば良いのか分かりません。エンプティステートはユーザーの継続利用を高める鍵となります。

現実のWebサイトやWebサービスのUX設計ではエンプティステートが見落とされがちです。ユーザーが継続的に利用し、何らかのデータが表示された“理想的な”状態は熱心に設計する割には、初期状態についてはあまり議論が尽くされない傾向があります。最初の一歩を正しく進めなければ、その後の展開はあり得ません。

現状を説明し、次のアクションを示すエンプティステート

ユーザーがエンプティステートに出会う条件は、いくつか上げられます。

  • 初期状態
  • ユーザーがデータを全消去した場合
  • 検索結果の該当なし
  • エラー

前述のとおり、初期状態はエンプティステートの代表例です。また、ユーザーがデータを消去した場合も該当します。例えば、迷惑メールを全て消去すれば、迷惑メールのフォルダーは空っぽになります。さらに、検索機能が提供されている場合は、“結果なし”がエンプティステートと言えます。さらに、忘れてはならないのはエラーの状況です。ページが見つからない「404エラー」は誰しも見た経験があるのではないでしょうか。

エンプティステートに共通するのは、ユーザーが次に何をすればよいのか分からなくなる点です。単に「エラー」だと言われても、何をすれば直るのか、自分が何か間違った操作をしたのか全く分かりません。エンプティステートでは、「現状を正しく説明すること」と「次に何をすればよいのか」を伝える必要があります。さらに、ユーザーの興味を惹き、システムの価値を訴えるメッセージを伝達できれば、ユーザーの継続率向上に貢献します。退屈で意味のない画面を作らないよう、ポジティブなユーザー体験を提供するようにしましょう。

Twitter、Amazon、Airbnbに見る優れたエンプティステート対策

Twitterの新規登録では10人前後のフォローを行うよう促されます。一定数フォローすると、使い始めたばかりのユーザーでも、Twitterのフィード画面がツイートで埋まり、様々な人の意見や情報が閲覧できるからです。Twitterが何か知らない人でも、その面白さを理解できるようにする取り組みと言えるでしょう。もし、ユーザー登録の段階で誰もフォローしなければ、おそらくフィード画面には「何もありません」という退屈なメッセージが表示されるだけで、ユーザーはTwitterという新しいプラットフォームが何なのか理解できなかったはずです。

Amazonは強力な推薦機能をエンプティステートに応用しています。Amazonの検索窓に誤字を含んだキーワードを入力してみてください。入力したキーワードに近い言葉に基づいて、関連する商品が一覧化されます。Amazonは決して「検索結果に該当する商品はありません」という残念なメッセージを表示しません。たとえ該当する商品がなくても、それに類する商品が見つかるため、ユーザーは買い物を継続できるのです。

Airbnbは該当するページが存在しない「404エラー画面」のユニークさで知られています。かわいいキャラクターが失敗してしまうアニメーションによって、何らかの不具合が起きている状況が理解できます。また、ユーザーが次の行動に移れるよう、主要ページへのリンクも忘れていません。エラーが発生するのは、サイト運営者にとって、ある意味“危機的”状況ですが、エラーページをさらなるサイト利用につなげるのは、「ピンチをチャンス」に変える野心的な取り組みと言えるでしょう。

“途中”の状態におけるユーザー体験を考える

エンプティステートとして初期状態やエラーの状態を検討し、理想的な状況を設計したとしても、UXは完成ではありません。最初から最後までユーザーは一足飛びに移るわけではなく、その途中の状態が発生します。例えば、プロフィール欄に、名前・職業・会社名・Eメール・Twitterアカウント・顔写真などといった多数の項目があり、ユーザーがその一部しか入力しなかったケースなどが考えられるでしょう。途中の状態であっても画面表示がおかしくならないよう、十分に設計する必要があります。また、ユーザーが完了したくなるようなプログレスバーの設置などがUXの向上施策として有効です。

“途中”の状態という意味では、画面の読み込みも重要なUX要素の一つです。画像をロードする間に画面が真っ白なままでは、ユーザーは退屈し、Webサイトから離れてしまう可能性もあります。ユーザーを不安にさせたり、長い時間待っているような感覚を抱かせたりしないよう、徐々に画面が読み込まれるようにするなど、細やかな気遣いが求められるのです。

まとめ

いかなるシステムも“空っぽの状態”から始まるにも関わらず、その時点でのユーザー体験がよく検討されていないために、誰からも使われないシステムが生まれてしまいます。エンプティステートにあるユーザーの満足度はシステムの継続利用に大きな影響を与えるのです。

参考文献


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