普段は気にも留めなかったことでも、受け手の認識を変えることで、人々の欲求を刺激することが可能です。
今回は、高いと感じた価格が低いと感じたり、参加する敷居が高いと感じたものが親しみやすくなったりするグロースハックの成功例を紹介します。Activation(利用開始)やRevenue(収益)を向上させる一手になるでしょう。
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http://cookpad.com/search/%E3%82%AF%E3%83%83%E3%82%AD%E3%83%BCより引用
クックパッドは日本最大の料理レシピ検索サイトです。
月額280円のプレミアム会員へ勧誘するメールの中で、単に金額を記載するのではなく、「コーヒー一杯分で全ての機能が使い放題!」と記載しました。
月額280円でWebサイトの機能が使えるだけかと思うと、やや高いと感じていた無料会員も、コーヒー一杯分でという表現なら何となく手頃な気がする、という感覚を巻き起こしました。表現を工夫することで、有料会員に登録するきっかけを与えています。
2014年には140万人ものプレミアム会員が登録しています。
https://www.wantedly.com/projects/26643より引用
WantedlyはFacebookでのつながりを活用した転職サイトです。友人関係やスキル・価値観を軸に転職活動を行うことで、企業にとっても求職者にとっても、最適なマッチングを行うことを目指しています。
求職者の面接依頼の「応募」ボタンを「話を聞きに行きたい」と記載しました。
「話を聞きに行きたい」とすることで、応募に対する心理的な抵抗を減らすことを狙いとしています。
求職者当たりの応募率を増加させました。さらに、企業の人事担当者に会うに至った割合も増加しています。
2012年のアメリカ大統領選に共和党のミット・ロムニー候補が出馬しました。選挙を戦うためには献金を募る必要があり、Webサイトでの献金募集を強化するために、グロースハッカーのアーロン・ジーンを招へいしました。
アーロン・ジーンのチームは数時間サイクルで、A/BテストやWebサイトデザインの改善を試みたと言われています。特徴的な施策は、献金画面にプログレスバーを設けたことです。献金目標額に対する現在の献金総額が一目で分かるようになりました。
Webサイトを訪れた人はプログレスバーを100%にするために、追加で献金したいという衝動に駆られます。自分がロムニーの選挙の成功に貢献しているという自尊心を高める演出となっています。
献金を複数回行う支持者の数を3倍に増やし、結果として1億8000万ドルの集金に成功しました。
http://www.amazon.com/b?node=5946775011
AmazonのEコマースサイトではCDを販売していると同時に、Amazon Cloud PlayerではMP3などの音楽デジタルデータの販売も行っています。
AmazonでCDを購入すると、商品が届く前に音楽データが視聴可能になるサービスがAmazon AutoRipです。対応する曲については、これから購入するCDだけではなく、過去に購入したCDに関してもダウンロードが可能になります。
消費者が購入するのは、CDという物理的なディスクから、楽曲そのものの体験に移りつつあります。Amazon AutoRipは消費者の目をCD販売から、視聴体験に誘導させる施策です。
Amazonの立場に立つと、CD販売は物流インフラの維持コストがかかるのに対し、ダウンロード販売は限界費用がほとんどゼロなので、ダウンロード販売を増加させることにメリットがあります。
Amazon AutoRipのサービスは、アメリカ・イギリスなど各国に導入されています。
ユーザーがサイト内で何らかのアクションを起こすとき、多かれ少なかれ心理的抵抗が生じますが、金銭を支払うというのはその中でもかなり抵抗のある行為です。
しかし、上記の例のように、情報の提示の仕方や切り口次第で心理的抵抗を減らすこともできます。それは単に収益を上げるだけでなく、サイトやサービスに対するユーザー満足度の向上にもつながっていくでしょう。