KOBITブログ

クープマンの目標値を使って市場シェアに即した戦略を立案しよう

この記事は約 7分 で読めます。

Women put a document on the wall

「業界1位」「市場シェア20%」これらの数字の羅列には、それほど意味がありません。業界環境の違いによって、打ち手が大きく異なってくるからです。シェア80%の業界1位と、シェア20%の業界1位では、どちらが余裕があるでしょうか。独占的な地位を確保した企業は高い収益性を確保したまま安定的な事業運営が可能です。一方で、競争状態にある企業は、一時的に業界1位になったとしても、値下げ競争などの厳しい事業運営が待っています。市場シェアと戦略の検討には「クープマンの目標値」が有名です。

軍事戦略を数式で表現したランチェスター戦略

市場の競争戦略に、古来の軍事戦略を持ち込んだ「ランチェスター戦略」は20世紀初頭から研究されてきました。数式を用いて論理的に戦略を表現したところに特長があります。特に、コロンビア大学の数学教授バーナード・クープマンの功績は大きく、市場シェアとそれに応じた戦術の考察は「クープマンの目標値」として知られています。

実例で見るクープマンの目標値

73.9%:独占的地位

73.9%のシェアを獲得すると、いわゆる「独占」状態になります。下位企業が何社いても、簡単に業界の動向が変わりません。航空などの公共性の強い事業は独占状態に至るケースがままあります。パソコンのオペレーティングシステムではマイクロソフト(Windows)が独占状態を続けています。マイクロソフトの例からも分かる通り、これ以上のシェアを獲得すると、独占禁止法などの法規制に縛られる場合があるため、何らかの対策をとる必要があります。

41.7%:相対的安定

独占ほどではありませんが、41.7%のシェアを超えたリーダー企業は安定的な地位を築きます。他社の動向を無視できるほどではありませんが、安定した事業が展開できます。潤沢な資金をもとに企業買収を仕掛けたり、多業種への展開によって事業拡大を図ったりするのが定石です。トヨタは相対的安定の維持を目標に掲げていると言われ、実際、2015年の自動車市場シェアは45.1%でした。

26.1%:強者の最低条件

リーダー企業と分類できる下限目標値が26.1%です。26.1%のシェアを確保していても、その地位が脅かされる業界1位である場合と、1位企業を追いかける業界2位の場合があると言われます。いずれにしても、業界への強い影響力を持った状態であり、新商品投入や値下げキャンペーンを行うと、下位企業が模倣するケースがよく見られます。例えば、スーパー業界ではシェア29.5%のイオンと、26.0%のセブン&アイ・ホールディングスが市場を牽引しています。

19.3%:拮抗する競争状態

19.3%の市場シェアを獲得した企業は上位グループに分類されます。19.3%が業界1位になる場合は、リーダー企業が存在しない、弱者同士が拮抗する競争状態であると言えます。どの企業も競争優位を示していない混戦模様です。競争状態から一歩抜け出すために19.3%のシェア獲得を目標値とする場合があります。文具業界では19.4%を獲得したコクヨが業界1位でした。しかし、差別化の難しい業界事情を考えると、17.1%のアスクルなど競合企業との違いはほとんどありません。

10.9%:市場認知

顧客や競合他社から存在を認識されるようになります。上位グループではないため、シェアをさらに落としてしまう高いリスクがあります。また、新商品の投入や値下げを行っても他社から注目されることがありません。この立場を活かして、既存商品にはない新たな価値を生み出す新規事業を立ち上げると、上位企業が対策を練る前に、新たな市場で独占的な地位を築ける可能性があります。具体例としては、バイク業界においてホンダ(52.3%)、ヤマハ(29.2%)に続いて、10.1%のシェアを持っている川崎重工業が上げられます。

6.8%:存在を許される下限

市場において競争するのが許される最低ラインです。6.8%以下のシェアしか保てない製品は撤退する方が懸命と言えます。一方で、新興勢力にとっては競争に参入するための最初の目標値と考えられます。例えば、居酒屋業界においてはワタミ(25.8%)、コロワイド(23.5%)、大庄(12.3%)が競争している中で、チムニー(7.0%)が続きます。

市場シェアに応じた戦略立案

クープマンの目標値は具体的な施策に落とし込む必要があります。26.1%以上の市場シェアを獲得しているリーダー企業であれば、自社の優位な状況を利用して攻勢をかけます。他社よりも豊富な資源を利用して、大規模な広告キャンペーンを打ったり、大胆な研究開発・設備投資をかけたりすることができます。既存の市場で既存の顧客に継続的にサービスを提供しながら、新しい市場の開拓に打って出る余力があります。

6.8%から19.3%程度の競争状態にある企業は他社のシェアを奪う、または、普及率を高めて市場の拡大を狙う戦略をとります。そして、安定的な地位にない企業は一点集中で資源を投入し、局所的にリーダー的な地位を確保するのが得策だと言われます。特定の地域を独占する、優先的に発注してくれる得意先をつくる、ニッチ領域で独占できる商品を作る等の施策が考えられます。狭い領域で実績を上げてから、横展開していけば、その後の展開が有利になります。どの順番でどのくらいの資源を投入していくかを考えるのが“戦略立案”の面白さと言えるでしょう。

クープマンの目標値を検討するには、業界の範囲を決める必要がありますが、業界の定義は簡単ではありません。技術の進化が加速化する昨今では、これまで競合していなかった企業が競合になったり、一つの商品が複数の機能を持ったりする場合があるからです。スマートフォンは最たる例と言えるでしょう。始めは通話機能しか持たなかった携帯電話が、音楽・テレビ・映画・インターネット・テキストメッセージなど、あらゆる商品を統合してしまいました。

企業によっては業界の定義を意図的に変える場合もあります。Googleは検索エンジンでは独占的な地位を築いていますが、テレビや新聞を含めた広告メディアとして見ると上位グループの一社となります。73.9%のシェアを超えてしまうと独占禁止法に抵触するとして規制当局から目をつけられるため、あえて競争環境に身を置いていると主張しているのかもしれません。逆に、実績のない新興企業ほど、市場を過剰に細分化し、独占的地位をアピールする場合もあります。市場環境分析は恣意性が含まれるため、客観的な視点を忘れないようにしましょう。

まとめ

市場シェアと競争環境によって採用するべき戦略は異なり、クープマンの目標値は重要な示唆を与えます。業界分析は複雑で、ビジネス環境によってすぐに変化します。継続的に分析を行い、コツを掴むようにしましょう。

参考文献

http://gyokai-search.com/


CATEGORY:

さあ、KOBITをスタートしよう。