ソーシャルメディアアカウントに否定的なコメントが書かれたときにはどうしますか?いわれのない誹謗中傷や批判に対して、どう対処しますか?ネガティブなコメントを全て削除していては、不公平な情報統制だと問われるのではないか?オンライン上でユーザーの声が直接公開されるソーシャルメディアでは、ユーザーコメントへの対応は敏感なトピックです。対応ルールを策定する際の検討ポイントについて解説します。
ソーシャルメディアの普及により、企業と消費者の距離が近くなりました。FacebookやTwitterでコンテンツを共有・拡散したり、「いいね!」やコメントを書き込んだりして、継続的な関係が築ける機会が増えてきています。ユーザー個人にあった対応を提供すると、そのユーザーは企業のファンになり、場合によっては広告塔となって、さらなるユーザー獲得に貢献してくれます。一方で、不満を抱いたユーザーに対して、企業が対応を誤ると、さらなる不満を増幅してしまうケースもあるのです。
VentureBeatの調査では、ソーシャルメディアにおいて、1日に240万件、年間では8億件以上の苦情が書き込まれていると言います。11,000人以上のオンラインユーザーのうち、実に17.4%が毎週、ソーシャルメディア経由で企業に対して文句を言っているのです。ソーシャルメディアのコメントとして書き込まれた苦情は、多くのユーザーの目に触れてしまうため、適切な対応をとらなければなりません。しかし、実際は、十分な対応がとられていないのが現状です。
上記の調査のうち、3割以上の企業はソーシャルメディアを通じて伝えられた苦情に対して、全く対応していないという結果が得られました。たとえ対応があったとしても、時間がかかり、ユーザーの満足度を下げています。ソーシャルメディアから苦情を言ったユーザーのうち、1時間以内に企業から返答を受け取ったユーザーは16.8%、4時間以内でも10.6%という状況です。そのため、企業の対応に十分満足していると答えたオンラインユーザーは、回答者のうち13.3%に過ぎません。ソーシャルメディアでのユーザー対応は企業の課題となりつつあります。
ソーシャルメディアに企業が投稿すると、多くのファンを抱える企業では、多数のコメントが付与されることでしょう。爆発的に増えるコメントに対して、どのように対応すればよいのでしょうか。企業の戦略や、ソーシャルメディア担当者のリソースに応じて、適切な方針を策定する必要があります。顧客へのきめ細かなパーソナライズ・サービスを提供するB2C企業であれば、コメントには原則返信するという方向性が合っているでしょう。一方で、担当者が数百件ものコメントに毎回応える余裕がないのであれば、原則的にはコメントへ返信しないというポリシーも考えられます。
好意的なコメントに対しては、一般的には返信するのが望ましいと言われます。ソーシャルメディアでの親しみやすさを利用して、企業と顧客の関係性を深めることができるでしょう。また、サービスの改善要望のような中立的なコメントは、対応に困るケースもあるかもしれません。製品の改善はソーシャルメディア担当者個人レベルで状況を伝えられる内容でもないので、一次回答に留めておくのが良いかもしれません。そして、否定的なコメントに対しては、十分な注意が必要です。批判やクレームが大きな問題にならないよう、必要に応じて謝罪の態度を示したり、フィードバックを返してくれたことに対する感謝を述べたりするようにしましょう。
ユーザーのコメントを削除するかどうかは、非常にデリケートな話題です。明らかな誹謗中傷を含むコメントや、事実と異なるコメントは、他のユーザーを不快にしたり、誤解を与えたりするケースも考えられるので、コメントの削除を検討してもよいでしょう。しかし、必要以上にコメントを削除してしまうと、自社に都合のよい情報だけを公開しているとして批判を受ける場合もあります。ソーシャルメディアでは、好意的な意見も否定的な意見も平等に公開されることをユーザーは求めます。自社の過失に対する批判は削除しないという方針に従い、バランスをとると良いでしょう。
ユーザーからのコメントに返信する際には、どのような人格で記載するのかによって、印象が異なります。社内スタッフの実名や写真を公開した上で、返信するようにすると、顧客との親密度の向上が見込めます。逆に属人性を配した企業アカウントとしてソーシャルメディアを運用すると、公式な対応として安心感を与えるメリットがあります。
JALはスタッフの“生の声”を活かして、実名を使った運用を行う代表例です。ソーシャルメディアの強みを活かして、ファンの増加に寄与しています。このような実名運用のデメリットは、担当スタッフに発信スキルが求められる点が考えられます。顧客との接点を強みとするB2C企業に合った手法です。
ローソンの「あきこちゃん」のように架空のキャラクターを設定する手法もあります。親密さを増すというメリットを生かしつつ、属人性を配して、組織として運用が行えるのが強みです。トラブルに陥った際に架空のキャラクターでは対応しにくいので、別途運用を考える必要はあります。
ユニクロのような属人性を配した運用では、一貫した態度でユーザーに接することができます。他の手法と比べて親密さを感じさせることは難しくなりますが、ルールを設ければ、複数人で運用での運用が可能です。担当者が変更になった場合でも、“キャラクター”の変化を感じさせないで運用できます。ソーシャルメディア担当者を複数人設置できる大企業や、誠実さを重要視する企業文化を持つ会社に向いている手法と言えます。
ソーシャルメディア上の苦情対応によっては、企業に対する印象が悪化してしまうリスクがあります。誰がどのようにコメントに対応するのか、削除する場合の基準をどうするか、あらかじめ決定しておき、滞りなくソーシャルメディアを運用できるようにしましょう。