小川卓です。コンバージョン率(以下:CVR)。皆さんウェブサイトの評価をする時に使っているのではないでしょうか。今回の記事では、改めて「コンバージョン率」について考えてみたいと思います。
コンバージョン率 = コンバージョンしたセッション数 ÷ セッション数
として計算している事が多いのではないでしょうか?例えばGoogle アナリティクスでは上記の定義を元に計算されています。サイトに訪れた回数が300回で、その内の15回がコンバージョンした場合は15÷300=5% となっているわけです。
何を「コンバージョン」として定義するかは今回は置いておきます。今回は「分子」と「分母」について改めて考えてみようという趣旨です。
まずは分子から見てみましょう。例えば「物件のお問い合わせ」がゴールだとしましょう。この時に、以下のような行動をユーザーがしたとします。
【訪問時に2回お問い合わせ】
1回目は1件の物件をお問い合わせ
2回目は2件の物件をまとめてお問い合わせ
この場合、多くのアクセス解析ツールでは1件としてカウントします。しかし果たしてそれで良いのでしょうか?1つの物件をお問い合わせした訪問と、上記(3つの物件をお問い合わせ)を同じ評価としてカウントするのが適切なのか。
もしビジネスゴールが「合計お問い合わせ物件数」として設定されている場合、誤った判断をしてしまう可能性があります。また集客やサイト内コンテンツ・機能の貢献も適切では無くなってしまうでしょう。
また、以下のような行動がある場合はどうでしょうか?(Google アナリティクスの「ユーザーエクスプローラー」機能などを使うと、こういった行動は多くのサイトでみられます)。
飲食の予約完了ページに到達(予約時間等の詳細が載っている)。その後、メールが送られてきて、予約の詳細は予約完了ページでみられるという案内がされている。あるいはユーザーがブックマーク等しておき後日また訪問する
この場合、アクセス解析ツールでは同じ予約なのに何度もコンバージョンしたとして計測されてしまいます。しかし本来「意味がある」予約件数は1件であり、実態よりコンバージョン率が高い数値が出てしまいます。このようなケースの場合は「ユーザー単位」の予約数で見る必要があるのではないでしょうか?
■上記の数値は本当に実際の登録数?
分母に関しても検討の余地があります。例えば店舗を持っているECサイトでは、オンラインでの購入率(CVR)は1~3%程度のことが多いのではないでしょうか?この場合、サイト全体を分析してもコンバージョンしていない訪問が97%程度あることになるので「成果に繋がっていない人」についての情報ばかりになってしまいます。
そこでまず考えないといけないのは、分母を訪問回数にした場合、本当にサイト全体のデータを使う必要があるか?ということです。例えば店舗の地図を調べようとしている訪問や、会社概要を見ようとしている訪問は分母に入れなくても良いのではという考え方です。また間違えてTopページに来てしまって退出していしまった訪問なども難しい所です。
例えば「商品関連のページを1つでも見た訪問」を分母とするという考え方があっても良いかと思います。
■利用者の訪問目的にあわせて分母を絞り込む
またサイトで一度しか行わないコンバージョン(例:会員登録)なども全ての訪問で見てしまっては意味が無いでしょう。
まだ「会員登録していない人」という条件と単位を変えて評価をしたほうが、より実態に合っていると言えそうです。
当たり前のように使われている「コンバージョン率」という指標。しかし目標の種類や対象となるユーザーなどを考慮し、適切な分子と分母を設定することをオススメします。そうしないとコンバージョン率の改善は難しいと筆者は考えています。
再購入を促す施策を行っていれば、自然と訪問単位で見たときの会員登録率は下がってしまいます。ぜひ改めて設定しているコンバージョンとその定義を見直してみてはいかがでしょうか?
【著者プロフィール】
小川 卓(おがわ たく)
ウェブアナリストとして、マイクロソフト・ウェブマネー・リクルート・サイバーエージェント・アマゾンで勤務後、フリーに。複数社の社外取締役やデジタルハリウッド大学院の客員教授として活動.。コンサルティング・勉強会・執筆に従事。
主な著書に「ウェブ分析論」「ウェブ分析レポーティング講座」「漫画でわかるウェブ分析」「Webサイト分析・改善の教科書」「あなたのアクセスはいつも誰かに見られている」など。
※KOBITブログでは、毎月1~2本程度、小川卓さんに記事を寄稿いただいております。
どれも興味深い記事となっておりますので、ぜひ他の記事もご覧下さい。
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