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変化するブランドの位置づけと、コトラーの「マーケティング3.0」

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brand chart with keywords and elements on blackboard

ビジネスの成長を実現するヒントとなるブランディングやコミュニティ戦略・マーケティング戦略について紹介していく連載「ブランディングからはじめるマーケティング」第二回。

前回のブランディングとは何か?これまでのブランド論を遡ってみるでは、そもそもブランディングとは何か、またブランド論が時代と共にどう変化していったのかについてご紹介しました。

今回は、ブランディングとマーケティングの関係をテーマに、ブランドの位置づけの変化、フィリップ・コトラーによるマーケティング3.0等について紹介していきます。

ブランディングとマーケティングの関係

変化するブランドの位置づけ

ブランド論の変化と共に、ブランディングとマーケティングの関係にも変化が起きてきました。ブランドの概念は大きく3つに分けられます。[1]

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手段としてのブランド

ブランド・イメージに焦点が当てられた1950年代以降では、マーケティングの一要素にブランドが含まれていました。マーケティングの基本は4P(Product:製品、Price:価格、Place:販路、Promotion:広告)とされますが、製品名やロゴ、パッケージといったものに表れるのがブランドだったのです。

結果としてのブランド

1980年代に生まれたブランド・エクイティ論では、ブランドをマーケティングの結果として捉えます。例えば、高品質・高価格・丁寧な接客・優美な広告を打ち出すマーケティング戦略で成功した企業は、ハイエンドのブランドとして認識され、より高い商品価値が生まれるようになるでしょう。

起点としてのブランド

1990代から現在に至るブランド・アイデンティティの考え方では、ブランドがマーケティングを規定するようになります。長期的な視野に立って考案した企業の「あるべき姿」をコンセプトとしてまとめ、それに従って、短期的な販売戦略としてマーケティングが行われる流れです。

ブランディングとマーケティング

ブランディングは、自社が顧客にどう認識されたいかを主張する取り組みです。社会情勢や人々の認識を踏まえ、企業の存在意義を訴える活動とも言えるでしょう。競合他社の存在はそれほど重要ではなく、顧客の心に芽生える感覚・感情に価値を見出します。

一方で、マーケティングは市場の中で競争を勝ち抜く手段と言えます。マーケティングで議論されるのは市場シェアの拡大や、市場の新規開拓です。顧客のニーズを満たしたり、顧客が気づいていない隠れた欲求を引き出したりするのがマーケティング活動の主な目的となります。

フィリップ・コトラーが提唱する「マーケティング3.0」

ブランディングとマーケティングは、それぞれが密接に絡み合い、その考え方も大きく変化してきました。マーケティング研究の大家であるフィリップ・コトラーは、この変化をマーケティング3.0と表現しています。

マーケティング1.0

マーケティングミックスと称される4Pが登場したのは1960年代と言われます。大量生産が可能になった、より多くの消費者へと商品を届けるための製品中心販売戦略がマーケティング1.0です。ブランドがマーケティングの一要素、手段として捉えられていた時期と重なります。

単一品種のT型フォードが高いコストパフォーマンスを元に自動車を大量に売りさばいていたのが良い例です。ヘンリー・フォードが「顧客は好みの色の車を買うことが出来る。好みの色が黒である限りは。」と述べたように、生産者主導の市場であった点が窺えます。[2]

マーケティング2.0

1990年代、供給能力が上昇するのに関わらず経済不況が続き、製品を売るよりも、消費者視点に立って「いかにニーズを満たすか」といった考えに変わったのがこの頃です。どの顧客層に対して何の価値を提供するかというポジショニング戦略に重きが置かれます。また、4C(Customer value:顧客価値。Cost:顧客にとっての経費。Convenience:利便性。Communication:コミュニケーション)が定義されたのも、消費者視点を重視する考えに基づいています。[3]

1995年にAmazonはオンライン書店サービスを開始しました。ここには生産者主導の視点はなく、消費者がどのように欲しい商品に辿り着けるかが最も重要な戦略となっています。売り場面積に限りのある店舗では見つからないような書籍であっても、オンラインであれば見つけられるというのは消費者視点の考えです。結果として、Amazonは世界で最も大きなEコマース企業としてブランドを形成してきました。

マーケティング3.0

インターネットが普及しソーシャルメディアを通して膨大な情報を手にするようになった消費者にとっては、マーケティング2.0の消費者視点でさえ十分ではありませんでした。モノに溢れた消費者は新たな体験を求めるようになります。精神的な価値や想いに価値が置かれ「どんな社会をつくりたいか」が重要視されるようになりました。機能や価格ではなく、優れたビジョンに消費者は心を惹かれ、積極的にコミュニティへと参加したいと考えます。

電気自動車を製造するテスラは「持続可能な輸送手段の提供」というコンセプトを提案しています。電気駆動による環境への配慮、自動運転技術の実現による安全性の向上など、コンセプトを体現する商品開発や販売戦略を実施してきました。このビジョンに共感する顧客層から評価され、めったに黒字を計上しない同社が時価総額でGM(ゼネラル・モーターズ)を抜き、時価総額で全米首位の自動車メーカーとなるに至りました。[4]

マーケティング

1.0

2.0

3.0

中心

製品中心

消費者志向

価値主導

目的

製品を販売すること

消費者を満足させ、つなぎとめること

世界をよりよい場所にすること

可能にした力

産業革命

情報技術

ニューウェーブの技術

市場に対する企業の見方

物質的ニーズを持つマス購読者

マインドとハートを持つより洗練された消費者

マインドとハートを持つ全人的存在

主なマーケティング・コンセプト

製品開発

企業と製品のポジショニング

企業のミッション、ビジョン、価値

価値提案

機能的価値

機能的・感情的価値

機能的・感情的・精神的価値

消費者との交流

1対多数の取引

1対1の関係

多数対多数の協働

「コトラーのマーケティング3.0 ソーシャルメディア時代の新法則」より抜粋

まとめ

かつては製品を売る手段だったブランドは、現在は製品を販売するための起点へと変化しています。そのため、本来見据える先が異なるブランディングとマーケティングは、今や切り離すことができない関係となっています。

「価値を主導」とするマーケティング3.0が提唱され、コンセプトを体現する商品開発・販売戦略を行ったテスラが評価されたのが、その証明と言えるでしょう。

[1] http://blogs.itmedia.co.jp/yasusasaki/2016/01/post_29.html 

[2] http://blog.livedoor.jp/onemillionlike/archives/1040367937.html 

[3] http://marketing-campus.jp/lecture/noyan/037.html 

[4] https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-10/OO755I6VDKHT01 


さあ、KOBITをスタートしよう。